わたしも「島で、未来を見ることにした」

離島旅

『僕たちは島で、未来を見ることにした』

「この島で起こった小さなことが、社会を変えるかもしれない」
僕たちはそう信じて、自分の未来をかけて、この島の未来をいっしょにつくる担い手になったのです。
そして、僕たちの行きたい未来の姿をそこに見ることにしました。

豊かな自然に囲まれて暮らす生活の中で、僕たちはこの島に自分たちの居場所を見つけ、島の人たち、島の文化から多くを学び、ここが学校のように思えました。
そして、本当に学校をつくろうと思ったのです。

この本はそんな僕たちが島で見た、小さな未来の報告書です。

本作の著者の一人である、株式会社巡の環取締役の信岡良亮(のぶおか りょうすけ)さんと、本著の舞台「海士」を知ったのは学生の時に参加した、「島キャン」がきっかけでした。

島キャンとは、大学生が日本の離島の様々な就業場所に行き、島おこしを体験するインターンシップです。

島キャン主催の事前学習を兼ねた講演会に信岡さんがご登壇され、自分の価値観、常識を覆すような島でのお話を伺いました。

その後、わたしは鹿児島の離島与論町役場で2週間のインターンシップを経験し、島に対する関心は一気に高まりました。
(最初の写真は、滞在中にお世話になった島の民宿のおじいちゃんとおばあちゃんと、インターンシップのメンバーとの撮ったものです!)

その熱は冷めず、明日からまた与論島に出かけます。

二度目の与論への来島の前日に『僕たちは島で、未来を見ることにした』を読んでみたら、そこにはタイトル通り日本の”未来”が書かれていました

 

海士町って?

島根県の北60キロ、日本海に浮かぶ隠岐諸島の中の一つの島であり町である。

現在人口は2331人(2012年8月末現在)。年間に生まれる子どもの数約10人。人口の4割が65歳という超少子高齢化の過疎の町。

人口の流出と財政破綻の危機の中、独自の行政改革と産業創出によって、今や日本で最も注目される島の一つとなる。

そんな日本の小さな離島で、地域づくりの会社『巡の環』を起業した著者が、島で見た「未来」について書かれています。

 

海士には「未来のビジョン」と「関わる余白」がある

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海士の面白さは、島にIターンをしてくる人たちが、基本的に“攻め”の姿勢で入ってくるというところにあると思います。

(中略)

僕は、ここまで海士が”攻める”若者を引き込むのは、海士が大きな未来へのビジョンを持っていることと、関わることのできる”余白”が残されていることにあると思っています。

都会に住んでいると、あまりに「他人事」が多いなと感じます

Googleマップがあれば道に迷うことはないし、買い物も日常で必要な最低限のものはコンビニひとつで揃ってしまう。
便利さは素晴らしいけれど、満ち足りた状況では、人と会話する必然が生まれず、生活が自己完結してしまいます。

けれど、島ではGoogleマップで表示されるお店なんてほとんどなければ、コンビニもありません。
そうすると必然的に島民の方に、「ここら辺でお昼を食べれるところはありますか?」「〜はどこで買えますか?」と聞く必要がでてきます。

それがきっかけになって、会話が生まれるし、たとえ観光客であっても、道に迷っている他の観光客がいたら、「教えてあげなきゃ!」という気持ちになります。

誰がどこにいるかが簡単に分かってしまうような小さな場所だから、他人の困っていることも「自分事」として感じられるのです。

 

海士の人口減少や超少子高齢化の問題は、まさに未来の日本の縮図。
難しい課題ですが、チャレンジすること寛容な空気の中で、トライ&エラーを繰り返すことで、未来の課題解決につながるヒントが得られるはずです。

 

まちづくりに大切なのは「よそ者、若者、ばか者」

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僕たちにとっての精神的支柱であり、海士海士の顔でもある山内町長がいつもまちづくりで大切にしているのは、「よそ者、若者、ばか者」です。

革新的な行政改革を行い、海士の名を全国に広めた山内町長がまちづくりにおいて大切にされているのは、社会において、のけ者にされていることの多い「よそ者、若者、ばか者」。

これは、その地域の中ではなく、外からの視点を持っていることと、そして若い力によって行われること、そしてばかで自由な発想を持った地元の人間が必要であるということの喩えです。

都会では、むしろこの三者に対して厳しいのではないでしょうか?

「よそ者」が隣に引っ越してきても、挨拶をすることも無ければ、「若者」のアイディアは年功序列の会社では受け入れられず、「ばか者」が新しいことをするには、頼れる協力者がいません。

まちを元気にするためには「よそ者、若者、ばか者」をのけ者にしないこと、そして自分も時に「よそ者」になって知らない土地に飛び込んでみたり、思い切って「ばか者」になる勇気を持つことも大切です。

 

古いものを本当に大切にしないと、本当に新しいものは生まれてこない。

僕は、未来を考えるためには過去を大事にしないといけないと根本的に思っています。時間は繋がっていて飛び超えることはできない。
古いものを本当に大切にしないと、本当に新しいものは生まれてこない。 

「古いものを本当に大切にしないと、本当に新しいものは生まれてこない」とは、海士町で活躍するIターンの陶芸家、勇木さんの言葉です。

現代ではあまりに急速に「今」が変化し続けるために、もはや東京だけで考えていると、場当たり的な未来が大量に生み出されては消えていく。そうした消費的な未来像に翻弄されてしまう印象です。

(中略)

東京にはたくさんの「今」がある分、過去を振り返る場所があまりに少ないのです。

「今」ばかりに注力する店舗ばかりが増える東京には、もう一度行きたいと思える「居場所」のような居心地の良い場所が多くありません。

そのため、東京に住んでいてもいつまでも観光客のような気分で土地に対する愛着が湧きにくいんです

東京の新陳代謝の良さが面白さを生み出してもいるけれど、例えば初めて日本に来た外国人がまた行きたいと思えるような場所でしょうか?
小さい頃、東京で過ごした人が大人になって、住む場所を自分で選択できるようになった時に、ずっと住みたいと思えるような「ふるさと」になっているでしょうか?

島民の皆さんが協力しているように、都市でもみんなで今あるものを「残す」ことをもっと大切にしないと愛着は湧いてこないと思います。

 

島はまちづくりの「未来」を教えてくれる

この本の発行日は2012年12月15日。
今から約4年前に出版されています。

つまり、この本に書かれている体験はそれ以前の出来事。

けれど、今東京で「まちづくり」に関わる仕事をしていて、この本は未だに日本の「未来」を教えてくれる存在で、「古い」ことは書かれていなかったのです。

島が「未来」が見え、「未来」を自分事としてつくっていける場所であることが証明されていました。

これからの「まちづくり」を考える人におすすめの1冊です。

 

Ai Tabata

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「AI TIME」編集長。まちづくりベンチャー企業で広報・旅行事業立ち上げ→オーストラリア・メルボルンで海外フリーランス。企画/PR/Webマーケティングを...

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