暮らしを“そーぞー”する旅

都内のとあるベンチャー企業で働いて3年目。

仕事でまちづくりに関わりながらも、毎日目の前の締め切りと、最低限の家事をすることで精一杯で、自分の住んでいるまちや、これからの暮らしなんて、実はゆっくりと考えたことなんて全然ありませんでした。

そんなわたしが「暮らしをつくること」を考えるようになったきっかけは、地元を離れて暮らす友人が「将来、地元に帰ったときの飲み友達がほしいから」と、親しい人たちを誘って、彼女の地元を案内してくれたときでした。

 

だれかの日常の暮らしを覗く旅

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「暮らしをそーぞーするツアー」と名付けられた彼女主催の完全オリジナルツアーは、非日常の旅をしながら、日常の暮らしを考える、なんとも不思議な体験。

 

彼女の地元は、神奈川県小田原。

小田原城の城下町として栄えたそのまちは、海も山もある豊かな場所で、週末になると「今日は海の気分?山の気分?」と家族会議をして、お出かけの場所が決めたものだと話してくれました。

けれど、彼女がわたしたちに見せてくれたのは、小田原が持つ美しい自然の景色だけではありません。

 

酒造から立ち昇る、お米が炊き上がる際のほのかに甘い香りを感じながら、小学生だった彼女が歩いていたという想い出の通学路。

音楽が趣味だという旦那さんのスタジオと、ものづくりが好きな奥さんのアトリエが一緒になった素敵な住まい。

 

彼女が見せてくれたのは、そのまちで暮らす人々の飾らない日々の風景でした。

 

成り行きで始めた東京での一人暮らしで、わたしは自分の暮らしを”想像”し、”創造”できていたのかな。

なんとなく選んだ駅の、とりあえず揃えた家具に囲まれた家で、それでもまあいいかと寝て、起きることを繰り返していなかったかな。

 

みんなと旅をしながらも、わたしは自分が主人公となるこれからの暮らしのことを考えていました。

その物語の登場人物は、おせっかいな家族や小学校からの親友、まだおぼろげな輪郭の将来の旦那さんだったり。

そして、そんな大切な人たちと、淡い色の花が飾られた大きなダイニングテーブルを囲んでたわいもないことで笑っていれたらいいなと思いました。

 

そう、それは、確かにたわいもないことに思えるのだけれど、今の暮らしと理想の暮らしの距離を測ってみると、なんだかなかなか遠くにある生活にも感じたのです。

 

日曜日の夕方、彼女はあえて強いメッセージを残すことなく、「少しでも小田原が好きになってくれたら嬉しい」とだけ言って、みんなを笑顔で見送ってくれました。

 

未来の暮らしのそーぞーする

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翌朝、旅の余韻に浸る時間もなく、わたしの慌ただしい日常がアラーム音と共にまた再生され始めました。

 

けれど、そんな中でもわたしは、旅に行く前とは違った気持ちで、毎日を過ごしています。

 

ただの寄り道かもしれないけれど、今住んでいるまちのことをもっと知りたくて、ここに暮らす理由に出会いたくて、ちょっと裏道を通ってみたり、気になるお店で食事をしてみたり。

ご近所に越してきた友人とスーパーに行って、ごはんを作って、真向かいの銭湯でひと息ついてみたり。

 

なぜならそれは、今このまちで過ごす時間が、未来の暮らしのそーぞーすることにつながる気がするから。

いろんなまちに留まる理由が持てたなら、なんて素敵な生き方なんだろう

 

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Ai Tabata

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「AI TIME」編集長。まちづくりベンチャー企業で広報・旅行事業立ち上げ→オーストラリア・メルボルンで海外フリーランス。企画/PR/Webマーケティングを...

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